「特定非営利活動法人こどもNPO」理事長 小島千春さんインタビュー

持続可能な社会をつくるために、子どもの未来をつくる力を共有し、アクションを起こす「特定非営利活動法人こどもNPO」

緑区に拠点を構える「特定非営利活動法人こどもNPO」は子どもと大人が一緒に考え、活動するイベントや居場所づくりに取り組んでいる。また、乳幼児向けの子育て広場「森の実」をスタートさせるなど、子育ち・親育ちの支援も行っている。子どもがやってみたいことや「こんな社会になったらいいな」という想いを尊重し、子どもが社会参画する機会をつくる理由について、理事長を務める小島千春さんにお話を伺った。

子どもの声に耳を傾け、一緒に考え、一緒に活動。子どもの社会参画をすすめていく。

小島千春さん
小島千春さん

――こどもNPOさんの主な取り組みについて教えてください。

小島さん:私たちは子どもが社会参画する場や機会をつくり、子どもと大人がともに持続可能な社会を実現することを目的に、さまざまな施設の運営やイベント活動に取り組んでいます。緑区内の「緑児童館」と中川区の「中川児童館」の運営をはじめ、冒険遊び場プレーパークの開催や学習サポート事業、「名古屋市子ども・子育て支援センター」の業務委託などを行っています。

――具体的な活動内容を教えてください。

小島さん:「緑児童館」では、子育ての悩みや不安をシェアし合いながら仲間づくりをする「あかちゃんひろば」、また、子どもの月齢に合わせて読み聞かせや工作をする「おはなしバスケット」など、参加費無料で自由参加でき、親子で楽しめるプログラムを行っており、外遊びを楽しむ「ちびっこ冒険ひろば」(乳幼児向け)、「冒険遊び場」(0〜120歳まで)を「新海池公園」で開催しています。子どもたちが主体となって、まちの仕組みから考え創り上げていく「こどものまち」という活動も行っています。
これらの取り組みで大切にしていることは、子どもが自ら考え挑戦し、やりたいことをやりきることで、「自ら育つ力」を発揮してもらうこと。中高生が中心になる「Teen’s Cafe」では、イベントの開催や外部フォーラムへの参加など、子どもの権利に関する活動にも取り組んでいます。また、緑区内の子育て支援団体が協力して開催する「みどり赤ちゃんまつり」などのイベントにも参加しています。

児童館での親子向けプログラム
児童館での親子向けプログラム

――NPO立ち上げの経緯を教えてください。

小島さん:「市民が自分たちで世の中を良くしていく仕組みをつくるためにNPOを立ち上げたい」と思っていた前々理事長の石原信行が、子どもに関わる活動で力を発揮していた初期メンバーに声をかけ、2001(平成13)年、「子どもの参画」をミッションとする団体として設立しました。もともと私は自分の子どもが小さかった頃、保育士と親が話し合い、学びながら子どもを育てる「自主保育」をしていました。その活動の中で子どもが持っている力を感じ、その力を大切にしたいと思っていました。子どもが卒室しても、自然体験をしたり、思いっきり遊んだりできる環境を作りたいと「子どものあそび研究会」を仲間と設立し、活動しており、「こどもNPO」の設立後間もなく、私も団体の一員となりました。

「こどもNPO」
「こどもNPO」

子どもと大人が一緒に活動し、「未来」をつくる。

――子どもたちが自主的に行う活動はどのように始まったのでしょうか。

小島さん:2003(平成15)年に拠点となる古民家を借りて、子どもたちとの活動が始まりました。今は移転しましたが、前活動拠点となった古民家はそれまでに卓球場として利用されていたことから「ピンポンハウス」と名付けました。私の自主保育時代の子どもたちなどにも声をかけて、「みんなでやりたいこと」を考えてもらい、話し合いました。そこで最初に出てきたのが「いつも遊んでいる公園を整備しよう」「遊び場になっている森をきれいにしよう」という活動です。中学生が中心になり、さまざまな活動が広がっていきました。

また、小中学生が来ない午前中の「ピンポンハウス」は乳幼児の子育て広場にして、利用者の幅も広げました。

「Teens Cafe」のユース会議の様子
「Teens Cafe」のユース会議の様子

――キーワードとなっている「こども × おとな = 未来」に込められている想いをお聞かせください。

小島さん:過去に公園の改修工事を行うにあたり、住民の声を聞いてほしいと要望し場を設けていただきました。この時、子どもにも意見を述べてもらいましたが、「子どもは大人が思いつかないことを考えつく。子どもの視点を大切にしたい」ということを感じました。子どもは力をもっています。子ども自身の問題やこれからの社会は、大人の意見だけでなく子どもの声を聴くことで、解決へと導いてくれるのではないでしょうか。

「こども × おとな = 未来」には、子どもの生きる権利、育つ権利、守られる権利、参加する権利を基盤として、子どもが社会参画する場や機会をつくり、子どもと大人が共に持続可能な社会が実現できるという、「こどもNPO」の活動目的を込めています。

「名古屋市地域子育て支援拠点 森の実」は乳幼児が安心して遊べる場、保護者が気軽に足を運びやすい場

「森の実」
「森の実」

――先日、スタートした「名古屋市地域子育て支援拠点 森の実」について教えてください。

小島さん:2018(平成30)年10月にスタートしたばかりですが、すでに、たくさんの親子に利用していただいています。平日10:00〜15:00(土曜日開放日も予定)に開設し、主に0〜3歳までの乳幼児と保護者を対象にしています。授乳コーナーやベビーベッド、ミルク用のお湯の用意もありますし、手作りおもちゃや木のすべり台などの遊具を用意していますので、無料で自由に利用していただきたいですね。乳幼児のみの施設になるので、落ち着いて遊ぶことができますし、利用者さん同士のおしゃべりの場やスタッフへの子育て相談も気軽にしていただけます。スタッフの中にはピンポンハウスの子ども広場を利用していた保護者さんがいます。これまでは支援活動の受け手側にいた方たちが今度は支える側に立ち、地域ぐるみの子育てのバトンを次世代へと受け繋いでいきます。

「森の実」内の様子
「森の実」内の様子

――自由遊びのほかに、講座等のプログラムも用意されているそうですね。

小島さん:「赤ちゃんタイム」「おはなしの日」「わらべうたで ふれあいあそび」などのプログラムを予定しています。ゆくゆくは、利用者さんの中から得意分野を生かした講座を開いていただくほか、サークルなども立ち上げていただければと思います。ここに集まる親子が自然や人々の中で豊かに育ちあい、お互いを尊重しあいながら子育ての輪が広がっていけば、と考えています。「森の実」は緑区の「子育て案内所」にもなっているので、緑区内の子育て支援情報や子育てイベントチラシを揃えています。情報収集の場としても足を運んでもらうことができます。

――今後の展開についてどのようにお考えでしょうか。

小島さん:これまでにも0〜18歳までの子どもたちと一緒に、多岐に渡って活動をしていますが、今後も、起きている問題を解決するために何をすべきか考え、これからの未来をつくる子どもたちの声を取り入れて、活動を続けていきます。

残っている自然の中で体験、発見しながら成長していくことができる徳重エリア

――緑区の住みやすさや子育て環境はいかがでしょうか。

小島さん:自分自身が子育てしていた30年ほど前はホタルのいる池もありましたし、里山もあって、自然豊かな地域でした。今は徳重の周辺も住宅地が広がり、店舗も増えて住みやすい地域になってきましたが、まだまだ自然は残っています。子どもは遊びの中の体験でいろんな発見や成長をします。公園も多いので、ぜひ、外へ出て坂を上ったり、落ち葉を拾ったり、子どもが遊びたいように遊ばせてあげて欲しいと思います。そういった点では子育てに必要な自然環境が残る地域だと思います。

また、緑区は子育てサークルが多いため、自分と子どもに合う活動がきっと見つかるはず。転居して来られるご家族も多いのですが、みなさん、快く受け入れてくださいます。もし、情報が必要だということであれば、「緑区子育てサークル紹介冊子」を参考にされてみてはいかがでしょうか。この冊子は子育てサークルの皆さんが自主制作されました。子どもの力もそうですが、母親たちのもっている力もいかされており、子育ての輪が広がっています。

緑の広がる徳重エリア
緑の広がる徳重エリア

小島千春
小島千春

特定非営利活動法人こどもNPO

理事長 小島千春さん
所在地 :愛知県名古屋市緑区鳴海町字大清水69−1116
電話番号:052-848-7390
URL:http://www.kodomo-npo.or.jp/
※この情報は2018(平成30)年10月時点のものです。