「自分を大切に」「仲間を大切に」「たくさん失敗」しながら、自分と仲間を大切にする「名古屋市立萩山中学校」
「名古屋市立萩山中学校」は落ち着いた雰囲気の閑静な住宅街の中にあり、学校が位置する場所はかつて萩の名所だった場所。萩のように力強く、伸びやかに生きる子どもたちが通っています。学校職員も、生徒が未来に生きる望ましい人間に成長できるようにと、新しい取組「SHM」を実施しています。学校の経営方針や教育活動などについて、校長の山内俊一先生にお話を伺いしました。
失敗してもやり直せる、生きてるだけで価値があることを伝えたい
――まずは、「名古屋市立萩山中学校」の沿革について教えてください。
山内校長:ここはもともとは萩(ハギ)の名所だったそうです。八事丘陵の南端に位置し、資料によると昔は海に面していて早くから人々の暮らしが営まれていた場所だったようです。江戸時代は「中根村」と呼ばれ、当時のうちわにも中根山と入江のような水辺が描かれています。学校の創設は1947(昭和22)年度、1948(昭和23)年度に「萩山中学校」、「竹田中学校」、「田辺中学校」の3校が統合して「瑞穂ヶ丘中学校」となり、1929(昭和24)年度に「萩山中学校」として再独立しました。2026(令和8)年度には創設80周年を迎えます。萩の名所にちなみ、正門を入った花壇に萩を植えています。成長が早くて、とても強い植物であることを感じています。
生徒数は昭和30年代のピーク時には2,000人近くの生徒がいて、徐々に減少してきたものの、近年は微増しています。現在は約800人、全部で24学級あり、そのうち特別支援学級が2学級あります。
――教育目標や力を入れて取り組んでいる学校運営・教育活動などを教えてください。
山内校長:学校の教育目標は「社会の一員として自覚をもち、未来に生きる望ましい人間の育成」です。望ましい人間像が4つあり、その中の文言で「自ら考え、正しく判断する人間」と「自ら学び、実践力のある人間」の部分を主体的と捉えて、指導要領の主体的・対話的で深い学びにつなげています。そして、「自分と仲間を大切にできる生徒の育成」を学校経営方針としています。
――「自分と仲間を大切にできる生徒の育成」についてもう少しお聞かせください。
山内校長:私には「人は生きてるだけで価値がある」という考え方が根幹にあります。そのうえで、自分の命を大切にできる生徒、仲間や自分の周りにいる人たちを大切にできる生徒になってほしいと考えています。人とのつながりを大切にしながら自分のために頑張り、誰かのために思いやれる子どもたちに育ってくれるよう、環境を整えています。
そしてもう1つ、子どもたちに伝えたいことは「たくさん失敗しときゃー(名古屋弁)」です。今、子どもたちはさまざまなことに対して失敗をおそれ、窮屈な感覚をもっている子どもが多いように感じますので、「失敗するのが普通だよ」ということを伝えています。子どもたちの前で話をする機会がある時は毎回、同じことを伝えています。大切なのは失敗したことを受け入れ、次にどうしていくか、ということ。失敗から学べることはたくさんあると思っています。
――「ナゴヤ学びのコンパス」についても教えてください。
山内校長:2024(令和6)年度から、「子ども中心の学び」を幼児期から青年期まで一貫して大切にするための名古屋市の基本的な考え方を示した「ナゴヤ 学びのコンパス」の実践が始まりました。名古屋市の学校教育を通じて「実現したい市民の姿」「目指したい子どもの姿」「重視したい学びの姿」を目指します。これは、本校の教育目標にも近い内容です。
――目指したい姿を実現するために、どのような取り組みをされていますか。
山内校長:学校は子どもにとって楽しい場所であるべきですが、大人も楽しく学校運営に関われるようにしたいということで、月1回「SHM(シン・ハギヤマ・ミーティング)」を教職員で行うことにしました。これは会議ではなくフリー参加のミーティングで、C(クラス・授業)、S(スクールライフ・学校生活)、W(ワーク・働き方改革)と3チームに分けて、職員が自由に参加します。例えば、Cチームは子どもにとっていい授業とはなにかとか、「ナゴヤ 学びのコンパス」で目指す姿を実現するための授業とはどういうものかなどを考えています。決め事がないリラックスした雰囲気のミーティングです。
ほかにも、実現できるかどうかは別として、Sチームではお昼寝タイムを作ろうとか、おにぎりタイムを作ろうとか、自由な発言が出ています。まだ数回しか開催していないのでなんとも言えませんが、世の中の事情や生徒の実態に合わせながら進められていくと思います。
――生徒が自由に発言する場はありますか。
山内校長:例えば、生徒の意見を集約して、生徒会の代表と教員の代表が校則についての座談会を毎年開いており、校則が少しずつ変わってきています。男女を分けた表記をなくしたり、制服についても検討が重ねられ2022(令和4)年度から新制服になりました。
周辺環境が整っている萩山中学校ならではの学校生活
――「ドリーム講演会」という行事があるそうですが、どのような内容でしょうか。
山内校長:名古屋市内の学校に配置している学校も多数ありますが、本校にもキャリアナビゲーターさんに常駐していただいています。中学生は進路や目の前の進学について視点がいきがちなので、キャリア教育としてもっと大きなことを知る機会になる「ドリーム講演会」を実施しています。2022(令和4)年度は東京五輪出場の現役オリンピアンに、2023(令和5)年度は富士山の世界文化遺産登録のために活動されていた方に講演していただきました。ご苦労されたことや夢に向かってどんなことを頑張ってきたのかなどをお話いただきました。
――体育大会や音楽会は近隣の公共施設を利用されているそうですね。
山内校長:全校生徒全員が参加して、保護者にも見学していただける行事が体育大会と音楽会になり、近隣で公共施設の環境が整っているので、「パロマ瑞穂北陸上競技場」や「日本特殊陶業市民会館」をお借りしています。なかなか普段、利用できないコンディション抜群の会場で開催できるので生徒にとって良い経験になっていると思います。
――部活動についても教えてください。
山内校長:部活動は陸上競技部が最も部員数が多く、サッカー部、野球部、剣道部、卓球部、ソフトテニス部、バレーボール部の運動系と、美術部、合唱部、園芸部の文化系があります。名古屋市は、活動時間や活動日を2026(令和8)年度に向けて順次縮小し、土日の文化的活動やスポーツをする機会を民間企業や事業団体に委託する方向で進めています。こうした授業以外の課外活動が経験できる機会はなくてはならないものと考えています。
――名古屋市の中学校で行われている給食制度、「スクールランチ」について詳細を教えてください。
山内校長:「スクールランチ」は全員が同じメニューの給食ではなく、複数のメニューから選択する方式の給食です。自分の健康を考え、食生活を自主的に管理する能力を育てることを目標としています。名古屋市立のほとんどの中学校はこの方式の給食になります。教室用メニューとランチルーム用メニューがあり、肉と野菜のスタミナサンドや豚肉のしょうが焼き丼など、全てのメニューが成長期に必要な栄養を摂取できるように配慮されています。ランチルームを利用するクラスは日によって異なります。スクールランチを選択しないで、お弁当を持参することもできます。
住み心地の良い落ち着いた環境の中学校
――学校の周辺の様子や地域の方との関わりについて教えてください。
山内校長:校区となっている中根小学校区、弥富小学校区、豊岡小学校区のそれぞれ地域の方に登下校時の見守り活動をしていただいております。当番制で本校の門に立ってくださったり、通学路に立って挨拶をしてくださったり、地域の方が子どもたちのために活動してくださっています。学校活動については学校評議員会などで発信しており、地域の方にご理解いただいています。
――周辺の住環境・子育て教育環境の魅力をお聞かせください。
山内校長:住み心地が良い、閑静な住宅街でもありますし、高校や大学が点在している文教エリアでもあります。そして、街中でありながら自然もたくさんあります。本校の敷地にもたくさんの木が植えられていて、特に桜が多く、春の開花を楽しみにされている近隣の方も多いようです。近くには山崎川が流れていて、そこも桜の名所です。本校の北側に位置する「パロマ瑞穂スポーツパーク(名古屋市瑞穂公園)」全体に豊かな自然がありますし、住環境に適した地域だと思います。
名古屋市立萩山中学校
校長 山内 俊一先生
所在地:愛知県名古屋市瑞穂区市丘町1-48
電話番号:052-831-6341
URL:https://www.nagoya-c.ed.jp/school/hagiyama-j/
※この情報は2024(令和6)年5月時点のものです。