特別インタビュー

最大規模の地震や風水害を想定した防災計画を立て、さらなる小牧市の安全を高める「小牧市 市民生活部 防災危機管理課」

活断層が通っていないとされ、周囲の市町村より高い位置にある小牧市は「比較的安全」と見られがちだ。しかし過去の教訓から、市では最大規模の災害を想定した防災対策を重ねている。

今回は小牧市の具体的な防災対策の内容について、防災士であり、自衛官時代に被災地での災害派遣を経験している「小牧市 市民生活部 防災危機管理課」副主幹の有馬靖さんにお話を伺った。

インタビューにお答えいただいた有馬靖さん
インタビューにお答えいただいた有馬靖さん

地震、風水害、土砂崩れなど、あらゆる災害を想定した防災対策と情報発信で、より安全性を高める小牧市

――過去に起きた災害や地域的特性をふまえて、小牧市ではどのような防災対策を重視していますか。また、危機管理課の役割についてお聞かせください。

有馬さん:過去100年間で人命に危害があった災害といえば、2000(平成12)年の東海豪雨です。そのほかにも、土砂崩れや若干の浸水が起きており、油断はできません。130年前の「濃尾地震」では、この辺りも大きな被害を受けたようですし、活断層がないと言われていた新潟の「中越地震」や、鳥取の「鳥取県西部地震」の例があるように、小牧市が震源となる地震が起こらないとも限りません。そのため、10年以上前から「想定濃尾地震」として、震度7、震度6強の地震が起きることを想定して防災対策をしています。

「想定濃尾地震」の危険度マップ(小牧市「地震防災マップ(想定濃尾地震)」より抜粋)
「想定濃尾地震」の危険度マップ(小牧市「地震防災マップ(想定濃尾地震)」より抜粋)

有馬さん:危機管理課では、平時には防災施策や危機管理に関わる総合調整として、防災計画や地域防災に関する計画を立て、災害に関する情報発信をしています。災害の規模が拡大するおそれがある場合は、災害対策本部を設置して運営します。また、毎年梅雨前の5月には風水害、冬には地震を想定した災害対策本部の運営訓練を行っています。その際も、最大規模の地震や風水害が起きたことを想定し、自分たちがどのように動けばよいか考える訓練を行っています。さまざまなパターンで訓練することで、いざという時に対応できるよう備えています。

2024(令和6)年に行われた「地震対応図上訓練」の様子

「市民生活部 防災危機管理課」では、副主幹であられる有馬さん
「市民生活部 防災危機管理課」では、副主幹であられる有馬さん

――南海トラフ地震の対策としてのインフラ強化や住宅の耐震化支援について教えてください。

有馬さん:小牧市内全ての公共施設の耐震化は完了しています。建築年数が長い建物も耐震診断は問題なく、今後、老朽化した建物をどのようにするか検討が必要になります。また、生活に必要となる水を確保するために、小牧市は水道管の耐震化も進めています。

小牧市の一般住宅の耐震化率は2020(令和2)年で89%でした。現在はもう少し数値は高いはずです。旧耐震基準で建築された住宅には無料で耐震診断を行い、耐震化する場合は上限を設けつつ費用の半分を補助しています。空き家の除去についても補助金制度を活用していただけますし、周囲の人や家に及ぶ被害も最低限に抑えられるよう、早いうちに耐震化率を100%に近づけることを目標にしています。

「小牧市の耐震化の現状と目標(住宅)」(「小牧市耐震改修促進計画〈改訂版〉 」より抜粋)
「小牧市の耐震化の現状と目標(住宅)」(「小牧市耐震改修促進計画〈改訂版〉 」より抜粋)

――豪雨や台風といった風水害に関する対策はいかがでしょうか。

有馬さん:少し離れた位置にはなりますが、木曽川と庄内川挟まれた場所に小牧市はあり、他の土地より少し高い「小牧台地」が広がっています。全体としては東から西に下っている地形のため、雨は自然と西へ流れやすい地形です。そのため東海豪雨の時はさまざまな上流からの雨が流れ込んで、清須市近辺に大きな被害が起きてしまいましたが、愛知県で、小牧市を含めた流域全体の水害を低減させる対策をとっています。

「東海豪雨相当の降雨に対する流域水害対策計画実施の効果」(愛知県「流域水害対策計画(素案)」より抜粋)
「東海豪雨相当の降雨に対する流域水害対策計画実施の効果」(愛知県「流域水害対策計画(素案)」より抜粋)

有馬さん:近年、全国的にまちなかを流れる水路で氾濫が起きているニュースを目にすると思います。水路による内水氾濫の場合に家の外へ出ると、道と水路との境目が分からず転落する恐れがあります。小牧市内のほとんどの河川に転落防止柵を設置していますが、ちょっとした内水氾濫であれば、家で待機していただく方が安全な場合もあるので、判断していただきたいと思います。

また、2024(令和6)年8月に起きた蒲郡市の土砂災害は危険区域に指定されていない斜面で起きました。原因は不明ですが、斜面である以上リスクはあるということです。小牧市もあらゆる災害を想定した防災対策を考えています。

――平時・災害時の情報発信体制と、その運用方法について教えてください。

有馬さん:2021(令和3)年に「小牧防災ガイドブック」を全戸配布しました。小牧市に転入される方には、手続きの際に窓口でお渡ししています。どのようなことが書かれているかというと、小牧市で予想される災害がどのように起きて、どのような備えが必要かということ、ハザードマップ、避難所一覧などで、小牧市の想定災害や対策を網羅できる冊子になっています。手に取りやすいところに置いていただき、日頃からご自宅の周辺やよく出かける場所の災害リスクや避難所などを確認していただければと思います。

「小牧防災ガイドブック」表紙
「小牧防災ガイドブック」表紙

有馬さん:また、防災に関する情報を配信する「小牧市防災情報メール配信サービス」や「小牧市公式LINEアカウント」の「防災メニュー」でも情報を提供しています。災害時には、危機管理課から発信した情報がテレビ、携帯電話の緊急速報メール、「Yahoo!JAPAN」のトップページや、スマートフォン・タブレット端末向けアプリ「Yahoo!防災速報」などで閲覧できるような仕組みとなっています。避難指示発令、避難所の開設、給水情報などを発信しますのでご活用ください。

不安な日々でも安全に過ごすために、避難所の設備や備蓄品でしっかり対策

――指定避難所の設備状況、避難中の子育て世帯や高齢者などへの配慮について教えてください。

有馬さん:2025(令和7)年7月1日に国で開かれた「中央防災会議」で、新たな避難所運営の指針が設定されました。これまで約1万9,000人の避難者を想定して準備を進めてきましたが、避難所でのパーソナルスペースの確保が広くなりましたので、学校の教室開放を検討するなどで対応していきます。また、簡易ベッドやプライベートテントについても少しずつ準備を進めていきますので、子育て中の方もプライベートな空間を確保できると思います。

ハード面では、本年度、小牧市の全小中学校の体育館に災害時にLPガスで稼働できるエアコンを設置しています。連続運転で3日分以上のガスを準備しているので、快適に過ごせます。指定避難所の利用が困難な高齢者や配慮が必要な方が利用できる福祉センターを利用した福祉避難所の開設も予定しており、毎年、開設訓練を行っています。

「福祉避難所」へ避難する流れ(小牧市「福祉避難所とは?」より抜粋)
「福祉避難所」へ避難する流れ(小牧市「福祉避難所とは?」より抜粋)

――避難所生活が苦痛に感じられる方もいると思いますが、どのように対応されていますか。

有馬さん:避難所へ避難するのは選択肢の一つです。付近の状況が安全で、自宅が安全であれば、自宅での避難生活は精神衛生面でも安心できます。その場合、食料はもちろんですが、ポイントになるのは、日頃からの水の備えです。

小牧市では在宅避難(自宅で安全を確保しながら避難生活を送ること)についての発信も行っている(「広報こまき 2025年5月号」より抜粋)
小牧市では在宅避難(自宅で安全を確保しながら避難生活を送ること)についての発信も行っている(「広報こまき 2025年5月号」より抜粋)

有馬さん:例えば、マンションのエレベーターが止まった場合、家族1週間分の水を階段で運ぶのは大変です。私の場合は生活用水をポリ缶で300リットル、飲料水を500ミリリットルのペットボトルを24本入り2ケース、お茶も2ケース分を家のあちこちに置いています。ガスの復旧が遅れる可能性は大いに考えられるので、ガスがなくても生活できる準備、例えば電気ポットや電気給湯器があると心強いと思います。トイレ対策には、便器にかぶせて使える備蓄用簡易トイレの備えがあると良いでしょう。

在宅避難時のために備えるべき備蓄品については、市の広報でも発信されている(「広報こまき 2025年5月号」より抜粋)
在宅避難時のために備えるべき備蓄品については、市の広報でも発信されている(「広報こまき 2025年5月号」より抜粋)

――避難所の備蓄品の種類や数、管理体制についてお聞かせください。

有馬さん:今後、小牧市全体で備蓄用の食料を8万食から16万食に増やします。小牧市民は約15万人いるので、みなさんに1食が行き渡る計算です。少なく見えますが、実際の避難者は人口の15%程度と想定しており、数日間は避難所で生活できる量を確保しています。必要な摂取カロリーも考慮しながら、種類の異なる非常食をお渡しできるよう、さまざまな非常食を揃えています。

「小牧市役所」地下にある備蓄庫内
「小牧市役所」地下にある備蓄庫内

有馬さん:私は被災地の炊き出しをした時に、食材の確保自体が大変になることを実感しました。公的備蓄にも限界はあるので、流通備蓄といって地元のスーパーさんやホームセンターさんから非常食や食材を提供していただけるよう、災害協定を結んでいます。学校給食センターで炊き出しをして食事を提供することも計画しています。

――今、地元企業さんとの災害協定というお話がありましたが、ほかにもどのような災害協定を結んでいますか。

有馬さん:小牧市は夜間人口より昼間人口の方が多い市で、それだけ企業さんが多いということです。調べてみると、災害時に帰宅困難となった従業員さんが3日間~1週間ほど宿泊できる対策をされている企業さんが多くありました。そのほかの中小企業の従業員さんや学生さんといった帰宅困難者への支援にも、手をあげてくださっています。

災害時に徒歩で帰宅する際に支援をしてくれる「徒歩帰宅支 援ステーション」ステッカー(「愛知県帰宅困難者等対策実施要領」より抜粋)
災害時に徒歩で帰宅する際に支援をしてくれる「徒歩帰宅支 援ステーション」ステッカー(「愛知県帰宅困難者等対策実施要領」より抜粋)

有馬さん:ほかにも、EV車での電力供給や、電気が復旧した後は充電施設を開放したり、車中泊避難者への駐車場とトイレを提供してくれたり、行政と地域の人たちだけでは解決できない課題を地域の企業さんに支援いただけるように協定を結んでおり、大変ありがたく思っています。

――全国の自治体との連携や災害ボランティアとの連携体制はいかがでしょうか。

有馬さん:広域避難や職員の応援など、被災地域外の自治体から相互に支援を受けられる仕組みをとっています。小牧市でいうと、近隣の自治体はもちろん、高知県南国市や島根県出雲市、静岡県菊川市、宮城県東松山市、北海道八雲町などと災害協定を結び、お互いに助け合える関係を築いています。

愛知県東尾張地区における災害時相互応援協定を締結したときの様子(2017(平成29)年7月31日(月))(引用:小牧市HP)
愛知県東尾張地区における災害時相互応援協定を締結したときの様子(2017(平成29)年7月31日(月))(引用:小牧市HP)

有馬さん:また、ボランティアセンターを市民会館で立ち上げられるよう、新たに倉庫を設置するなど、調整をしているところです。ボランティアを運営してくれる社会福祉協議会と協定を結び、開設訓練も行っています。

地域ごとの防災対策は「自主防災会」などでカバー

――自主防災組織、防災リーダーの育成、防災教育の実施状況についてお聞かせください。

有馬さん:同じ小牧市内でも地域によって、地理的な特性がある地区や新しい住民とのコミュニティが盛んな地区など、それぞれ状況が異なるので、地域にあった防災が必要になります。そのため、小牧市の129自治会の全てに「自主防災会」、もう少し大きな単位で小学校区単位で「地域協議会」があり、それぞれ話し合いや訓練が行われています。これらには市の職員が参加し、また、防災訓練には学校の先生や中学生も参加します。毎年、10月には小牧市全体の総合防災訓練を行い、地域の防災力を高めています。

2024(令和6)年に小牧市で行われた「総合防災訓練」の様子

有馬さん:「防災リーダー」は、それぞれの地域でのリーダーとして、地域や小中学校の防災訓練で訓練支援や出前講座などをされる方です。「防災リーダー会」は民間の団体になりますが、小牧市の協働事業として防災の普及啓発を行っています。防災管理課では、年に1回の「防災リーダー養成講座」を開催しています。行政の呼びかけだけでなく、同じ目線の市民の方と一緒に防災活動をしていただいています。今、避難所の自主運営が期待されているので、日頃から地域の人とつながりながら防災に関わっていただけると、避難生活も安心できると思います。そういう中で、「防災リーダー」は力になってくれる存在です。

「防災リーダー養成講座」の様子(引用:「小牧防災リーダー会」Facebookより )
「防災リーダー養成講座」の様子(引用:「小牧防災リーダー会」Facebookより )

――今後、小牧市へ住む方へメッセージもお願いします。

有馬さん:「小牧市は安全」というイメージがありますが、先にもお話したように、至る所にリスクがあることを認識して欲しいと思います。被災者の多くが口にするのは『こんなことになるとは思わなかった』という言葉です。過信せずに備えることが大切です。私たちもしっかりサポートできるよう、行政ができることをしっかり取り組んでいきます。防災訓練や防災講座、地域の防災に関する集まりなどに参加していただき、周囲とつながりながら防災力を高めていきましょう。

副主幹 有馬靖さん
副主幹 有馬靖さん

小牧市 市民生活部 防災危機管理課

副主幹 有馬靖さん
所在地:愛知県小牧市堀の内3-1
電話番号:0568-72-2101
URL:https://www.city.komaki.aichi.jp/admin/
※この情報は2025(令和7)年9月時点のものです。